

『タイミング』
トラベラーズノートのプロデューサー飯島淳彦氏もご自身のブログで薦めていた「180°SOUTH」という映画を先日観た。翌3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生した。自然との付き合い方、自然の優しさや怖さ等を教えられた映画を観た翌日に自然の恐ろしさに直面した。
この大地震に襲われた時は会社に居た。会社は都心にあるビルの25階にあり、立っていられないほど揺れた。悲鳴が聞こえ、机の引き出しやキャビネットがオフィスのあちこちで音を立てて飛び出していた。本当に正直もうダメだと思ったくらい揺れた。
揺れが落ち着いてから、周りの高層ビルがそれぞれゆっくりと揺れているのを窓から見た時に恐怖が増大した。その日帰宅するのに物凄く苦労したのは皆さんと同じである。
かなりの距離を歩かなければならなくなり、地震の恐怖を忘れて普段のように見慣れない景色を楽しみながら歩こうと思ったが、楽しんでいる歩き方は出来なかった。知らず知らずのうちに足早になっていた。金曜日の夜ではあったが、表情には出さずとも恐怖を内に秘めている人達でいっぱいの尋常ではない人出の路上で体のどこかが恐怖を感じ取り、足早にさせたのだと思う。
やっとの思いで帰宅してPCを開くと、大地震のことを知った海外の友人達からお見舞いのメールがいくつも届いていた。僕の書いたストーリー「旅先で食べたもの・1」に登場した現在はカナダに居るEsther, 「旅の必需品」や「リラックス・3」等に登場したミネソタのRichard、「距離・1」に登場したデトロイトのLinda, 「On The Road ・2」に登場したワシントンのTomとBrad, 「口約束・1」「久々・2」等に登場したシンガポールのJohnとJosephは携帯電話に連絡してくれた上にショートメールをくれた。
しばらくしてから、「口約束・2」等に登場した台北のJohnnyとVincentからもメールが来た。「再会・1」に登場した従姉の義母Annはお見舞いのカードを送ってくれた。
Eメールのやり取りがない学生時代ホームステイをさせて貰ったイギリスのお家へは、きっと心配しているだろうと思ったので、こちらから先に無事である旨を葉書ですぐに知らせた。
このストーリーを投稿する寸前の3月末にそのお家から手紙が来た。いただいた手紙に、「すぐに手紙を書こうと思ったが、ニュースを観て郵便はまだ機能していないだろうと思った。連絡を貰えて本当に嬉しかった」とあった。海外でも報道されているあの被災の様子を観たら、地理的な位置などは関係無しにそう思うだろう。
国内外を問わず他の友人達からも心配したメールをたくさんいただいた。カナダに居るEstherは日増しにその悲惨な状況が伝わり始めた報道をテレビか何かで観たようで、涙が出てきたと再びメールをくれた。Richardは以前一緒に勤めていた会社のかつてのアメリカ側の同僚達に僕が無事であることを伝えてくれ、援助まで申し出てくれた。
今まで国内外を問わずかなりの回数旅をしてきたが、僕は幸いにも旅先で災害に遭ったことは一回もない。テレビ各局で繰り返される報道を観ながら、楽しみにしながらやってきた日本で今回被災した海外からのトラベラーは一体どのくらいいるのだろうかと考えた。
海外から来ていて被災して困っている方々、行方不明の方々等の情報を得ようと政府系のサイト等をチェックしてみたが、それらしき情報はなかった。諸外国からありがたくいただいた支援については記載があった。国単位・大使館単位などで救済しているのだろうか?僕の情報の探し方が悪いだけであって欲しい。
東北地方の被災された方々には国も民間も全力で支援している。他の地方のボランティアの方々の応援も活発になりつつある。何かをしなければと思うが、ボランティア慣れしていない僕は、例え現地に行ったとしても、気持ちばかり走って迷惑なだけだろう。たまたま日本を旅していて被災して困っている海外の方々、特に日本が初めての方々に、自分が旅先で親切にして貰った様に何か助けになることが出来ないだろうかと考えている。神戸の時はどうしたのか、どうだったのか調べてみようと思っている。
宮城といえば、2002年のワールドカップの仕事で訪れた仙台が初めてで、鮨が本当に美味しかった。東京からもそれほど遠くはないので、ワールドカップ中からゆっくり旅してみたいとずっと思っていた。
福島は親友Oの出身地であり、福島で行われた彼の結婚式に当時勤めていた会社の同期達とともに出掛けていった。彼の奥さんも福島の出身だ。先日「本を読んで」でここに書いたように、福島は野口英世の生家へ両親に連れて行って貰った思い出があるところだ。もう15年以上親しくさせていただいている某酒造会社の取締役のTさんには会津へ遊びに来いとずっと言っていただいている。季節を見てそろそろお邪魔しようかと思っていたところだった。
旅先で出会った人達、一緒に旅をした人達に今回ここぞというタイミングでお見舞いのメッセージ等をいただいた。被災の報道を見ていると様々な場面でのタイミングの妙や難しさを思い知らされる。被災して苦しい思いをしている東北の方々はもちろん、外国から来て被災して現在苦しく心細い思いをしている方達にここぞというタイミングで支援が出来たらと切に思う。