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『口約束・2』

『口約束・2』

2010/05:STORY
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 先日約2年振りに香港へ遊びに行った。今年は4月にベトナムへ行ったので、有給休暇で2回も海外へ行くことができて嬉しい。香港では航空会社に勤めていた時からかれこれ約17、18年お世話になっている大先輩Dorisとも再会できた。今から8年前に会社を辞める時に「香港に来たら必ずシーフードを食べに行こう」と言ってくれたことは今回も守られてとても楽しい時間を過ごすことが出来た。
 今では会社の体制が変わり、海外出張が多くなったDorisは最近旅先から絵葉書をくれるようになった。ご家族それぞれに、こちらもかれこれ約17、18年お世話になっている、台北のSabrinaもよく旅先から絵葉書をくれる。Sabrinaはほぼ毎回Dorisと一緒に出張しているのでDorisが絵葉書をくれるようになったのはSabrinaの影響かもしれない。理由は何にせよ大変嬉しいことである。
 旅をすると旅先から絵葉書をよく送ってくれる人達の中に、台北のJohnnyがいる。Johnnyは僕が航空会社に勤めていた時の台北にある取引先の担当者だった。そのJohnnyの相棒にVincentがいて、彼ら2人とは本当によく一緒に働いた。この2人は面白くて、2人で一緒に航空業界を渡り歩くほど仲良しなのだ。台湾の高雄で仕事をした時も取引先が偶然彼らの古巣で、彼らの助けなしにはそのた高雄でのプロジェクトの成功はあり得なかった。
 この2人は争うように航空機の模型を集めていて、僕の弟も同業他社にいたので彼らのコレクションに協力したこともある。それから、2人ともお酒が好きなので、仕事の後でよく飲みよく食べた。勿論その時は業者と顧客の関係は存在しない。
 彼らとはいろいろな話もした。Johnnyが言った今でも忘れられない一言がある。1999年頃から今では珍しくなくなったIDや携帯電話をぶら下げるネックストラップがじわじわと世の中に出てきた。当時勤めていた航空会社は、IDのホルダーとしていち早く会社名のロゴが入ったものを何色か作成していた。それらはアメリカ本社のショップに行かないと手に入らないものだった。2001年の初頭に台北に出張してJohnnyと現場を見て回っている時に、いつも現場で会う女性スタッフの一人が、僕がIDをそのネックストラップにつけているのを見て、僕にそのネックストラップをねだった。それに乗じてではないが、すぐにJohnnyもねだってきた。航空機マニアはエアライングッズのコレクターでもあったようだ。確か二人とも色はブルーがいいと言った。今度本社に出張した時に手に入れてくることをその場で僕は気持ちよく承知した。
 それからすぐの本社への出張時に彼らがお望みのネックストラップを入手した。次回台北に行った時に直接彼らに手渡そうと思ってあえて送らないでいた。特にプロジェクトがなかったせいか、すぐに行くことになるだろうと思っていた台北への出張がないまま2001年9月11日にあのテロが起きて、その後間もなく僕は失業した。いつでも渡せるように、無くさないように保管していたネックストラップは結局直接渡すことは出来なくなってしまった。
 会社を去る数日前に彼らのことを知っている後輩に事情を話して彼らに届くようにネックストラップを託した。会社を去りしばらくした後で、連絡先として残してきた私用のメールアドレスにJohnnyがe-mailをくれた。そのメールでJohnnyは、僕がネックストラップのことを覚えていたことに驚いたと書いていた。それから、今でも忘れられない一言である「日本人て信用できるんだなあと思った」がお礼とともに書かれていた。当時は突然の失業というい想像もしなかったことが自分の身に起きて感情のアップダウンが激しい時期でもあったので、Johnnyのその一言は「当たり前じゃないか、Johnny。」と思いながらも、とても嬉しかった。塞ぎ込もうと思えばいくらでも出来た時期に何だか救われた気がした。
 2007年の11月に、最後に訪れてから約6年ぶりに台北に行った。前述のSabrinaやVincentが食事会を開いてくれた。Sabrinaにだけ2泊3日の慌しい旅だけど台北に行く旨を伝えたのだか、何故かJohnnyとVincentにも知れ渡り、彼らに黙っていたことを叱られた。慌しい旅程だし、週末に時間を取っては申し訳ないと思ったのが裏目に出てしまった。久し振りの再会だったのでそれはそれは楽しい食事会だった。Johnnyは残念ながら家族旅行で台湾の郊外に行っていたのでその食事会の席にはいなかった。しかし、食事中にVincentの携帯電話に、僕と話すために旅先から電話をかけてきてくれた。週末で満席の上賑やかな台湾料理のレストランでほとんど電話からの声が聞こえない状態で久し振りに話をした。家族との楽しい一時を過ごしている最中に、久し振りに外国からやってきた僕のために時間を割いてくれたのは本当に嬉しかった。
 もう何年もビジネス上の利害関係はないのにこれだけ親しくしていられるのは本当に嬉しいことだ。帰宅して郵便受けにJohnnyからの絵葉書を見つける度にその時の電話のことと、Johnnyが言った「日本人て信用できるんだなあ」を思い出し、それは本心だったのだろうと思う。
 台北も香港と同じくらい大好きなところである。あっという間に2年以上台北にはご無沙汰している。今度台北への旅を計画する時は、Johnnyの予定を聞いてからスケジュールを立てようと思う。突然のスケジュール変更や中止が起きて、「日本人て信用できるんだなあ」が「やっぱり日本人は・・・。」にならないように慎重に綿密にスケジュールを立てなければと思っている。