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『旅先より』

『旅先より』

2016/07:STORY
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 一昨年・昨年とそれまで25年以上お会いしていない方々と会食する機会に恵まれた。この五月のある日、私が幹事になりさらにご無沙汰していた方も加わって会食をした。女性三人、男性は私を含めて二人のメンバーとの出逢いは当時新宿歌舞伎町にあった英会話学校だった。私は学生時代に週二日は生徒として学び、その他三日から四日はアルバイトとしてそこで働いていた。メンバーはその教室の当時の責任者や本職員の方々だ。以前「お使い・1」でその当時の様子を少々書いた。
 それぞれが離れ離れになる前まではほとんど毎日顔を合わせていた時期が数年続いていただけに、ご無沙汰から生じるぎこちなさは再会して間もなく消え、気が付くと自然と当時の雰囲気になっていた。
 ご無沙汰していた25年以上の間、私とそのメンバーを繋いでいたものは、暑中見舞いや年賀状等の季節のご挨拶はもちろんだが、最も大きな役割を果たしてきたのは、私が各位に旅先から出していた絵葉書ではないかと思う。絵葉書のほとんどは仕事や休暇で訪れた海外からだが、その旅先を思いつく限り挙げてみた。
アジアではやはり、台北、香港、シンガポールがもっとも多いだろう。
北京、上海、それからゆったりと休暇を過ごしたホーチミンやチェンマイからも送っただろうか。
欧米は間違いなくミネアポリス、シカゴ、それにロンドンだろう。
休暇で出掛けた先ではリラックスした気分で、仕事で出掛けた先では一日の仕事を終えてホッとした気分でその都市を訪れた証である絵葉書にそのときの近況を書いた。こうして無意識のうちにコツコツと書き続けた絵葉書が縁を繋いでいたのだと思う。


AIR MAILのラベルは国ごとに異なっているのが面白くて、時間があるときは郵便局へ切手を買いに行き必ず入手します。


  
現在は余暇以外で渡航することがなくなりました。余ったり貰ったりした切手やAIR MAILのラベルはアドレス帳代わりのトラベラーズノートのフィリル(パスポートサイズ)に貼って再利用しています。


旅に出なくても普段の生活の中でコーヒーやビールの絵葉書を町で見つけると、コーヒー好きな方とビール好きな方には近況を書いて今でも送っている。我が国日本には四季がある。これはと思って手に取ったその季節を代表する景色のものは海外の友人達に今でも送っている。国内で遠出をした先で見つけたものも同様だ。その絵葉書は私にとっては普段の生活の中でのものだか、受け取ったほうにとっては非日常のものだから、旅先から届いたものと同じ感覚で受け取れるだろうと思っている。
 会食で再会できた方々との出逢いの場所である新宿歌舞伎町は、当時(1980年代後半)とは比べものにならないくらい今では多少だが安全になったようだ。上級者レベルの日本好き・東京好きの中には歌舞伎町のリピーターもいるかもしれない。リピーター・・・頻繁に訪れる人という意味ではこの言葉は恐らく立派な和製英語だろう。英会話学校でアルバイトをしていたせいかこういう言葉には今でも敏感だ。上級者レベル・・・和製英語ではないがこの言葉にも英会話学校の名残が伺えなくもない。
 歌舞伎町で出逢った方々と今回浅草(ここは世界中からの“リピーター”が多いだろう)で開いた食事会はいい雰囲気だった。六月が見えて来た時期ではあったが、早くも暑気払いをどうしようかという話が出るくらい盛り上がった。自然と幹事はまたまた私になりそうだが・・・。
 その会食の席にいらして欲しかった「お使い・1」に登場したSさんとは以来連絡が全く取れず、誰も連絡先を知らない。もう一人Oさんというこのメンバーの誰もが親しかった方がいるが、同じく誰も連絡先を知らない。私が社会に出たあとも10年くらいは音信があったが、途絶えて久しい。人一倍私の旅先からの絵葉書を楽しんで下さった方だけに、今はどうしているだろうかと特に旅先で絵葉書を書く度に思う。
 会食当日幹事とはいえ集合場所の雷門へ到着が早過ぎてしまった。時間潰しに立ち寄った店仕舞いの支度忙しい仲見世で雷門の絵葉書を何枚か買った。7月が目と鼻の先に迫って来た今、暑気払いの計画を練り始める前に、絵葉書の繋がりしかないもっとご無沙汰している方々にその絵葉書で近況を知らせるほうを先にしようと思っている。

追記:
旅先では必ず絵葉書を書くので、旅に出る前に予め宛名ラベルを印刷して持って行きます。
絵葉書に貼ると少々事務的になってしまう気もしますが、絵葉書の上でのレイアウトが整って文章を書くスペースが綺麗に確保されるので、ここ十数年このスタイルを続けています。
宛先の国名と送る手段の下に引く赤線はSharpieの小さいものを使っています。赤線は予めラベルに引かず、旅先で投函前に引きます。赤線を二本引くことにより絵葉書を書き終え、投函の準備が整ったことを自分に知らせています。