

『旅先で食べたもの・9』
タイのカレー、ベトナムのフォー、韓国の参鶏湯など旅先や専門店でしか食べられなかったものがインスタント食品になって簡単に食べられるようになった。直輸入された現地で売られているものに加え、日本で製造されているものもあり種類も豊富になった。特にタイのカレーがレトルトになったものの種類の多さといったらない。ツナやチキンが入った缶詰のものはビールのアテに結構重宝している。
最近驚かされたのは、シンガポールでよく食べたあのラクサが日本のある世界的企業からカップ麺で出たことだ。ラクサをよく見つけ、よく商品化したなと思った。あのローカル色が強く日本では好き嫌いが分かれるであろうものを商品化しようと思った人はどのように社内で上層部を納得させたのだろうかと考えてしまった。
ラクサを初めて食べたのはシンガポールのポロクラブだった。当時航空会社に勤めていて、同僚に付き添ってタイガービールとの商談に同席した。私はそのとき休暇でシンガポールを訪れていたのだか、タイガービールの工場も見学出来るとのことだったので付いて行った。そのときの様子は以前「社会科見学」に書いた。タイガービールの担当者が昼食の席をそのポロクラブで設けてくれた。同席した我々のシンガポール側の貨物課のマネージャーがメニューの中からラクサを薦めてくれた。日差しが強烈で馬など一頭も走っていない芝生が綺麗に刈り込まれたポログランドを眺めながら初めてのラクサを食べた。ちんけなグルメ評論家みたいなことは言いたくないが、スープがスパイシーでクリーミーなその麵料理は美味しかった。シンガポールを訪れたときには必ず、それも複数回食べるものはチキンライスだが、このラクサもチキンライスほどの頻度ではないものの結構食べている。
2010年に訪れた時に食べたものです。食べたことはすっかり忘れていましたが、残っていた写真を見て思い出しました。とあるビルの地下にあったホーカーズ(日本でいうところの屋台村)で食べたものです。改めて写真を見ると、プラスチックの食器やレンゲに辛味ソースを乗せて供するところに屋台を感じます。
私の話をずっと読んで下さっている方にはおなじみのシンガポールの友人Johnにラクサが日本でもカップ麺になって身近になった話をした。生きるために食べるのではなく食べるために生きているのだと公言している食いしん坊のJohnは返事よりも早く現地で普通に食されているラクサの写真をFacebookのタグ付けで何枚か送ってくれた。“Facebookのタグ付け”・・・その送り方に時代を感じた。
シンガポールの料理が好きな私に、“そろそろ遊びに来いよ”とばかりに現地の美味しいものの写真をJohnは結構な頻度で送ってくる。それらを今度は私が都度Facebookで私の友人達に披露する。食べものが切っ掛けでシンガポールに興味を持ち、訪れてみたくなった友人も少なくはないと思っている。
そのJohnが送ってくれた本場のラクサの写真(2枚とも)です。
食器にも異国を感じませんか? それからレンゲが入ったままなのも(笑)。
Johnが送ってくれた写真をしばらく眺めていると、あのスパイシーでクリーミーなスープの味とシンガポールのあの湿気、厳しい暑さが甦ってきた。そして、キンキンに冷えたタイガービールが飲みたくなってきた。
タイガービールも最近は結構簡単に手に入るようになった。近所に数店買えるところがある。
写真にも写っているが、現地で食べたときのことを思い起こすと、蒲鉾と油揚げが確かに入っていた。箸とレンゲと共に供されるが、ラクサはその見かけも味も全体的にどことなく洋風だ。そのスープの味に慣れると垣根のようなものがなくなり、しばらく食べないでいるとその味が恋しくなる。そして食す頻度が上がれば普段の食生活に馴染んでくるのだろう。蒲鉾や油揚げが入っているところからも、やはりこれはアジアの料理なのだと思った。
この話を書く切っ掛けになったカップ麺は美味しかった。現地で食べたものはそこまで上品な味ではなかったが、そこはMade in Japanの成せる技なのだろうか。
食べた後で早速Facebookとメールで友人達にそのカップ麺を薦めた。スープを少々試食させた母が自ら買いに行くほど気に入ってしまったのには恐れ入った。ラクサを知らなかったのは意外だったが、流石我が一族最多の渡航歴と訪問国数を誇るだけある。実際に食べてみた人達からの反応は概ね好評だった。シンガポールに行ったことがない人達が、これまでのシンガポールに関する私からのあらゆる発信に加えてこのラクサが切っ掛けとなって、旅行者のあいだでは一度訪れれば十分といわれている私の大好きなシンガポールに興味を持ってくれたらいいなと思った。
従姉から貰った“ラクサの素“?が棚の奥から出て来ました。写真に蒲鉾らしきものと油揚げが見えますね。ゆで卵も合うのでしょうか。近々休日のランチのときにでもこれを使って本場に近いものを拵えてみようと思います。
インスタントではなく本場で食べられるものに近いものが食べたくなったので調べてみた。灯台下暗しだったようで、チキンライス(勿論日本のケチャップご飯のあれではありません)が食べたくなると出掛けて行くところのメニューにあった。チキンライスと生のタイガービールを目指して行くのでその店ではメニューはほぼ見ない。そのお店のラクサが美味しいとなったら、今後はチキンライスを食べに出掛けたはずが結果としてラクサを食べてしまった・・・ということが結構な頻度で起こりそうな気がする。
この話が掲載されるとなると、時期的に年末が目と鼻の先に迫っている頃だ。この年末の年越しそばの選択肢に、シンガポールのラクサ、ベトナムのフォー、台湾の牛肉麺等を加えるのは一考ではないだろうか。
もしくはそれら全てを家族や友人と少しずつ食べ比べしつつ、今年訪れたところ、これから訪れる予定があるところ、予定はないが訪れてみたいところに思いを馳せながら年を越すのもトラベラーならではと思うのだが・・・。
私は各地に思いを馳せつつも、この2015年に実現したニューヨーク在住の従姉、その従姉の義弟、台北からやってきたVincentとJohnny, 去年20数年振りに再会し今年はさらにもうお一人加わった学生の頃からお世話になっている方々との東京での再会を振り返りながらこの“トラベラーな年越しそば”をやってみようかと思っている。
トラベラー各位、こんな年越しはいかかですか?
どうぞよいお年を。