

『私の「旅のなかの旅」』
母に貸していた本が一日まとめて戻ってきた。その中に「旅のなかの旅」(山田稔著 白水Uブックス刊)があった。まだ未読のトラベラーの方がいらしたらお薦めしたいこの本のそのタイトルに惹かれたのは定かだが、この本との出会いは旅の本の特集だったか新聞の書評だったかは定かでない。
私の中での「旅のなかの旅」というのは、ある旅先の一カ所に落ち着きながら、別の旅先へ赴くことだ。2009年に初めてマカオへ行った際は、香港に落ち着きながら日帰りで行ってきた。
ご存知の通り、1997年に香港がイギリスから中国へ返還され、
1999年にマカオもポルトガルから中国に返還された。マカオも香港と同じく返還後50年は現状保全されることになっている。したがって、
香港からマカオへ行く際には、ご存知の通り我々外国人はまだ出入国の手続きが必要である。
空路香港に到着し、九龍にあるホテルに荷物を置いて一息ついて時計を見ると、香港の話を書く度に登場する現地の大先輩との会食の約束までまだ時間があった。当日でもよいと思ったが、出国審査にかかる時間や当日のチケット売り場の混み具合が全く読めなかったので、翌日のマカオ行きに備えてフェリーのチケットを買いに、ホテルから徒歩約10分のところにある中港城というフェリーターミナルへ行った。そのフェリーターミナルは数々のお店やショッピングモールが並んでいる広東道にあり、見かけは商業ビルなので、こんなところから船が出るのだろうかと思ってしまう佇まいだった。フェリーの会社は一社ではないようで、事前に調べておいたフェリー会社のチケット売り場へ行く際に少々迷ってしまった。しかし、辿り着いてしまえば簡単なもので、希望していた出発時間のチケットはあっさりと購入できた。
香港(九龍)- マカオ往復のフェリーのチケットです。
この旅のトラベラーズノートに貼ってあります。
往復で値段が違うのは、曜日と時間帯が関係しているのだと思います・・・って、値段の違いにいま気が付きました(苦笑)。
西貢で大先輩においしい海鮮料理を前夜ご馳走になった余韻が残るなか、午前9時発のフェリーに搭乗するために、搭乗前の出国審査の時間も考えて余裕を持ってホテルを出発した。前日に日本から香港までは空の旅でやってきて、これから、ほんの一時間程度ではあるが、マカオまでは船旅だという気分であった。
パスポートを携えているのに、“海外”へ行くとは思えない程の軽装で出掛けて行った。振り返ってみると、乗ったフェリーは鹿児島で桜島へ行く際に乗ったフェリーと船内はあまり変わらない感じがした。しかし、行き先が “海外” なので、そのときそんなことは露とも思わず、未踏の地ポルトガルの香りが残る彼の地への船旅にひとり満足していた。
日本を出国して香港へ入国、その翌日に香港-マカオを日帰り。
パスポートのスタンプから慌ただしい出入りが分かると思います。
結局は中国の2都市を訪れただけですが、3泊4日の旅でこれだけパスポートにスタンプが集まるなんて・・・。
これも政治の妙でしょうか。
朝食を摂らずに乗った午前9時出発のフェリーの船内は、その日が土曜日だったことも関係したのか結構混んでいた。航行が落ち着いて来た頃に船内を歩き回ると、フェリーの模型が売店で売られているのが目に留まった。自宅にあるスターフェリーの模型と並べたら素敵だと思い、記念に一つ買おうと思ったが、帰りにしようと思ってその場では控えた(結局帰りに買うのを忘れた)。
約1時間の船旅でマカオに到着した。入国審査を経て、マカオの通貨であるパタカに両替をし(結局香港ドルで事足りた)、遅い朝食に名物のタルトを食べるために、すぐにタクシーでカフェを目指した。
カフェまでのタクシーの道中、車窓から見た景色は香港と違わぬ見慣れた様子でありながらどことなく独特であり、初めての場所に来たことを実感した。
カフェでの朝食、街歩き、予備知識無しで出くわしたいくつもの世界遺産、ガイドブックを信じて昼食を食べに入ったら大ハズレだったポルトガル料理のレストラン、福隆新街(ここが一番印象に残った)などの昔ながらの街並、カジノなど、天気に恵まれず時折小雨がぱらついた曇り空のなか初めての場所を楽しんだ。歩き始めてすぐに、香港とは異なったヨーロッパとアジアが混ざり合った独特の空気が魅力的に感じた。ここは必ず再訪することになるだろうと思った。
世界遺産のセナド広場を背中にして写した1枚だと思います。
左が郵便局です。建物がヨーロッパ調ですね。右のコカコーラの看板には中国が窺えます。
マカオらしい写真は数枚しか残っていませんでした。日帰りで慌ただしかったのと、十分な下調べをしてまたすぐに訪れるつもりでいたのだと思います。
歴史を感じさせる佇まいの郵便局で切手を買い、エアメールのラベルを貰った。代金はフェリーターミナルで両替したパタカで払った。
世界遺産の聖ポール天主堂跡の近くで絵葉書を買った。その近くにポストがあったのも覚えている。カジノが入っているホテル、グランド・リスボア・マカオのコーヒーショップで休憩しながら絵葉書を書いて投函したかもしれないが、定かでははない。この話を読んだ友人達の中で、私からマカオの絵葉書を受け取った人がいたら、知らせてくれるだろう。
その郵便局で記念に購入した切手シート。
何故か図柄がシンガポールの名物で構成されていました(笑)。
切手を入れてくれたセロファンの袋には漢字(この場合は中国語というべきですね)とポルトガル語が併記されています。これだけでも異国にいることを感じられますね。
郵便局で貰ったエアメールのラベル。POR AVIAOはポルトガル語でしょうか。
先日学生時代の友人夫婦と食事をしているときに、マカオへ行ったことがあるかと尋ねられた。あると答えこの旅の話をした。幼少の頃から海外での経験が豊富で、香港には何度も訪れているその友人が、まだマカオを訪れていないということは少々意外だった。
その会食から帰るとすぐに、旅の計画の参考になればと思い、持っているマカオに関連した本を引っ張り出して書名をメールで伝えた。その中には雑誌BRUTUSのマカオ特集もあった。
書名を伝えたあとで、改めて手元の本を見た。「紀行」とついた2冊はその初めてのマカオから帰ってすぐに、いつになるか分からない再訪に備えて購入したのだった。
この話を書く上でそれぞれページを繰ってみたが、つい見入ってしまい時間が経つのを忘れてしまった。トラベラーとしての自分の嗅覚がここは面白いぞということを嗅ぎ付けていたのを思い出した気がした。
トラベラー各位にお馴染みのベストセラーのガイドブックはこの旅に持参しました。
BRUTUSも持って行ったと思います。付箋は予習もしくは復習の跡です(笑)。
香港へ出掛けて行って、その滞在中に日帰りでマカオに連日通うのも面白いと思った。これは是非やってみたい。香港で再訪するところは決まっているし、新たに訪ねようと思うところもあるが、そうたくさんはないのでスケジュール次第では十分可能だ。
日本のパスポートを携えて毎日イギリス(香港)からポルトガル(マカオ)へ行くなんてとっても素敵だ。
異国にいながら毎日出入国のスタンプがパスポートに増えていくなんてまさに“旅のなかの旅”そのもので、とても素敵じゃないかと思う。