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『ついにそこへ・1』

『ついにそこへ・1』

2013/04:STORY
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 この話はその旅を終えてすぐに書こうと思っていたが、あっという間に4年も経ってしまった。嬉しいことに、他に書いておきたい旅の話がたくさんあったので、ここまで時間が経ってしまったのだ。しかし、ここで書いておかないと、せっかくの旅の思い出がどんどん薄れていき、訪れたという事実しか記憶に残らなくなってしまう。
 いつかそこへとずっと思っていて、訪れることが叶ったその旅先はベトナム。旅先としてベトナムを意識し始めたのは、今から20年近く前だっただろうか。当時自分の中では、ある程度のところは旅をし尽くした感があり(実際はそんなことは全くないのだか)、自分の中で少々面倒くさそうなところへ行ってみたいと思ったときに、当時候補の一つになったのがベトナムだった。今では考えられないが、日本からの直行便は、確か関西国際空港からしか出ていないという時代で、さらに観光ビザの取得に1万数千円かかったと記憶している。その事実が判明した時に、ベトナムへの距離がさらに遠くなっていった。しかし、旅の神様の思し召しなのか、トラベラーとして一度は行っておくべきところだったのか、今から4年前にベトナムへの旅が実現した。
 団体行動は根っから受け付けないので、航空券とホテルの手配だけして、ホーチミンへ飛んだ。訪れるのはホーチミンだけ。初めてだし、せっかくだからハノイにも行って、世界遺産も観て、上から下までぐるりと・・・なんて考えは毛頭なかった。トラベラーとしての経験上、その国に魅せられたり、縁が出来たりすれば、ここというところを回るチャンスは後に自然にやってくると信じているからだ。

 ベトナムに降り立つまでは、ベトナムと聞いて街並を思い浮かべたとき、ぼんやりと浮かんでくるのは、夥しい数のバイクだった。到着後、空港から街中に車で徐々に入って行くに連れて、目の前の光景にバイクの数がどんどん増えてきた。夕方の帰宅ラッシュらしき時間帯だった所為もあったかもしれないが、あっという間に道からバイクが溢れんばかりになり、乗っていた車がバイクに幾重にも囲まれた。その光景に恐ろしさを感じたくらいだ。車の中から見たその街並に漂うバイクからのスモッグに、翌日からの街歩きが少々思いやられた。
 滞在したホテルはマジェスティック。その都市の歴史のあるランドマーク的なホテルというのは、主に経済的な理由で、実際に泊まる前に私にとっては憧れのホテルでいる期間が長いのだが、その時は初めてのベトナムであるにも関わらず、迷うことなく選ぶことができ、滞在できた。
このホテルについては改めて書くこととする。



滞在した部屋にあった電話。クラシカルな感じが伝わるだろうか。

  
初日の夕食は、街中にあるとあるベトナム料理のレストランで現地のビールに春巻きを二種類。
ベストセラーのガイドブックに出ていた、このレストランへの二度目の訪問はありませんでした。
ガイドブックを信じ過ぎてしまうという失敗・・・たまにやってしまいます(笑)。



 一夜明けて改めて街歩きを始めると、バイクの波に圧倒された。信号のないところを渡るときのコツを掴むまで少々苦労した。こういったところが、旅先で・・・というか、異国での「郷に入れば郷に従え」なのだろう。
台北でもバイクの多さに驚いたが、市内は交通が整っているので、歩行者に対する影響は皆無だった。それにバイクは、人々の移動手段として使われていた。しかし、ホーチミンでは、本当に「足」としてバイクが使われていた。こちらの人達がバイクに股がっている時間は相当なものだろう。乗り方もノーヘルメットは当たり前、二人乗りや子供を前に据えての三人乗りも当たり前のように行われていた。


朝食の場所から見たサイゴン川です。かなり見辛いですが、中央に接岸している対岸からやってきたフェリーはバイクに股がった人達で一杯でした。接岸が完了すると一斉に街に流れ込んでいきます。しばらくこの光景を眺めていました。夜も同じ光景が繰り広げられていました。


 バイクの波をぬって、ベンタイン市場へ歩いて行った。暑さも手伝ってか、辿り着いただけで疲れてしまった。だが、この街に慣れたら、買い物はここで全部済ませられると思った。
 とにかく暑いので、滞在中街を歩くときはペットボトルの水をずっと手放せなかった。
 街歩きの途中でホーチミン像の前を何度も通り過ぎた。
ホーチミン像の後ろの聳え立つホーチミン市民委員会の上で揺れているベトナムの国旗を見たときに、異国にいるのだなあと実感した。国旗の色の赤がそう思わせたのかもしれない。
青空の中で国旗が揺れている様を写真に撮った後で、しばらくその場に佇んでしまった。それは、静かに、そしてどことなく優雅に揺れている国旗から、平静を感じ、その平静を得るのにベトナムが苦難の歴史を経てきたことが瞬時に思い出されたからだと思った。


ホーチミン像と後ろはホーチミン市民委員会。
国旗の揺れかたがゆったりではありましたが、堂々としている印象を受けました。
ここで記念撮影をしている人達がたくさんいました。



 フランスに支配されていた当時の名残なのか、ベトナムはパンがなかなか美味しいとのことで、一日昼食にサンドイッチの店に行った。注文したサンドイッチは美味しく、欧米人が多く来ていたのも頷けた。


ステーキサンドイッチです。美味しくいただきました。


 このサンドイッチの店から目と鼻の先にある中央郵便局には、滞在中数回訪れた。天井が高くアーチ型をしていた、外観も内部も昔の駅を思わせる佇まいだった。ここではホーチミンの絵葉書を手に入れた。ホーチミンをあしらった切手等がたくさんあった。


中央郵便局で入手したホーチミンの絵葉書です。何故か袋に入って封までされていました。
この絵葉書も含めて、友人達に訪れた証として絵葉書を中央郵便局から投函しました。


 このように、勝手気ままに初めてのベトナムを楽しんだ。
現地通貨のドンよりも、ベトナム戦争で戦った相手国アメリカの通貨であるドルが不自由なく、却って便利に使えたことに違和感を覚えた。
 歩き疲れた時に、トラベラーズノートのプロデューサー飯島淳彦氏がストーリーで書いていたレックスホテルに立ち寄って、ビールを飲んだりもした。
どことなく薄暗くて歴史が感じられるコーヒーショップは嫌いではなかった。

 しばらく時間が経ってから、こうして過去の旅を振り返るのも悪くはないと、この話を書いていて思った。文面には表れないが、その時に感じた暑さや忘れていた匂い等が、書いていて甦ってきた。そういえば、旅先で、特に初めての旅先では必ずバー巡りをするが、この旅ではバー巡りをした記憶がない。トラベラーズノートに記した旅の記録にも特に記述がない。やはり、「暑い」という文字がたくさん記されていたので、日中の暑さに負けてバテバテだったのだろう。その時は本当に暑かったのだ。
 次回のベトナムは、ハノイをスタート地点にして名所を訪れ、帰国三日前くらいにホーチミンに移動して、その旅と前回の旅をゆっくりと振り返る・・・そんな再訪にしたいと思った。