『ダンケ』

　バターブレンドコーヒー『御影ダンケ』。旅先というアップテンポが生来の散策魂に火をつけ、炎天下の中５駅ばかり歩いて到着した神戸のコーヒー店。口渇と疲労から、ドアベルを引きちぎらんばかりの勢いで「たのもうー！」などと入ったりはできない小心者の自分は、さっと身なりを整え、そっと扉を引く。

　「ドリップコーヒーを４パックください」

　先ほどまでの疲弊感などおくびにも出さず、しれっと注文。バターの薫りが芳醇で、ストレートでいただいても強すぎず、マイルドにしてコクのある絶品珈琲。今回は時間がないため、こちらの味を自宅でも手軽に楽しめるドリップパックを購入するまでにした。


以前、店内でいただいたコーヒーとケーゼクーヘン

　店員さんが袋に詰めているほんのわずかの間のことだった。店内奥にいたはずのご主人が、いつのまにかコトンとお冷やを差し出してくれていた。何も言わずに。演技派俳優として名を馳せた（単に底意地の悪い八方美人、迎合・いなし上手なだけ）自分の困憊っぷりを見抜いていたのだ…！マスター!!

　喫茶特有の細長くて美的バランス抜群のグラスに注がれたその氷水は、道中 口にしたどの飲み物よりもとりわけ身に染みた逸品だった。

　シェーン。