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1986年のトラベラーズノート

1986年のトラベラーズノート

2011/09:STORY
HIRO


 今から25、6年前、高校生だったボクは毎日バイトに明け暮れていた。
 特別欲しいものもなかったが、友人と「どっか行きたいね」なんて話をしながら雑費以外は貯めるようにしていた、雑費というか交遊費。高校生は、その「雑費」が 多かった....
 5~6万円くらい貯まると友人と旅行の計画をした。

 そして高校1年生の春休み、ボク達はそれを実行することにした。
 まだ免許がなかったので、電車などの公共機関のみを使って行く2泊3日貧乏旅行だ。
 「何処に行こうか?」
 話はそこから始まった。
 中学生の時に行った修学旅行先(京都・奈良)はどうか?
 東京でもいいね。なんて言っていたが、東京は小学生の時の修学旅行先である。
 外をほとんど見たことがない高校生の発想なんてそんなもんである。
 でもボクには行きたいところがあった。
 「神戸」だ。
 ある種の憧れを抱いていた街。そこはとても遠い所に感じた。
 そこでポートタワーが見たかった。
 東の港町「横浜」は行ったことがあったが、西の港町「神戸」は行ったことがなかった。
 「神戸」行きを提案すると、友人はあっさりOK。
 かくしてボク達の「初旅行」が決定した。

 時刻表で乗り継ぎ駅や乗るべき電車を調べ、ガイドブックを読み漁り、(ここは行きたい)っていう場所もたくさん出てきた。
 あとは行き当たりばったりでいいか、と。
 1泊目のホテルだけは決めておいた。もちろんポートタワーの近くのホテルだ。

 新幹線は使わずに、鈍行で行くことにした。
 深夜2:00頃乗車したがすごく混んでいて、ボクらは乗降口付近で荷物の上に座るしかなかった。米原で乗り継ぎ、三宮へ。(途中、また乗り継いだ覚えが...)
 結果としてすごく時間がかかったが、これも(良い思い出)。

 神戸に着いてから、異人館めぐりをしたり、メリケン波止場、ポートタワー、三宮などをふらふらしながらいろんなパンフレットや、観光ガイドなんかをもらった。
 移動は歩きかバス、食事はファーストフード。
 街は人がいっぱいで、ボク達の住んでいる所とは全然違う、まさに「街」だった。
 通りがかったレコード店の店先のスピーカーでは、ブルーススプリングスティーンが何処かの会場で「Born in The USA」を思い切り歌っていた。

 ボクはそれらパンフレットの類を後から小さなノートにセロテープでぺたぺた貼り、色ペンを使って何やら書いたのを思い出す。
 今になって考えてみれば、あれこそがボクが人生で一番最初に持った
 「トラベラーズノート」だった気がする。
 ずっととっておけば良い思い出になったのだろうけど、残念ながら引っ越し、転勤の間にノートは何処かへ行ってしまった。

 (自分たちが、自分たちの貯めたお金で初めて行った旅行だという事実)に興奮していたので、行く場所全てが新鮮で楽しかったし、何よりも「自分達が行きたい場所に行く、行った」事自体がただ嬉しかった。

 それから高校を卒業するまで友人との公共機関での旅行は続き、免許を取得してからは車で年に数回遠出をするようになった。それは今でも続いている。
 あの時の気持ちのまま、今はステアリングを握っている。
 電車で旅行に行っていた高校生は、車の中で友人と仕事の話や、家庭の話なんかをするようになった。
 そして小さなノートはトラベラーズノートに変わった。

 あの頃、トラベラーズノートという商品があり、その存在を自分に取り入れていたとしたら、ボク達の旅行は少なからず違ったものになっていたであろう。

 今はちゃんとした(商品としての)トラベラーズノートがある。
 いつかの少年が持っていた、いつかのトラベラーズノートの内容は忘れてしまったが、あれは正真正銘の「トラベラーズノート」だった。
 真っ白なトラベラーズノートのページを見ていると、あの時の「神戸」が、とても懐かしい想いとともに甦る。


 ・・・・先ほど、ブルーススプリングスティーンが「Born in The USA」を歌い終わり、今は「The River」を歌っている。
 そしてそれを聴きながら1日の仕事を終えて、家路につく2011年の僕がそこにいる。