TRAVELER'S notebook Users Posts(2007-2023)
「TRAVELERS通信」

「TRAVELERS通信」

2011/08:STORY
HIRO


「今日は西伊豆に来ていますよ~、抜けるような青空!青い海!と~っても気持ちがいいんです。そして…..」
何度目かのカーヴをパスしてラジオに耳を傾けると、FMから女性アナウンサーの弾んだ声が聞こえてくる。
(そうか、ここは西伊豆だよな)
なんて思いながら眼下に広がる駿河湾を眺める。
ラジオのアナウンサーが言うとおり、道や木々の反対側は見渡す限り「青」だ。
何処までが(空)で何処からが(海)なのか、鮮やかな色ではないが、ぱっと見ただけでは判別ができないような(青)だ。
何度か来ている場所だけれど、こんなに綺麗な空と海には数えるほどしか出会っていない気がする。



今朝、目が覚めて何となく(今日は何処に行こうかな?)と考えた。
いつものように何処に行くとも決めず、愛用の万年筆2本とトラベラーズノートパスポートサイズをカバンに詰め込んで車に乗る。
しばらく走っていたが、何故か急に伊豆に行きたくなった。特に理由はない。
強いて言えば(最近行っていないなあ)という程度の理由だ。
伊豆へ行くなら絶対に西伊豆がいい。これはボクの持論である。


こんなに素晴らしい景色が自宅を出て、2.3時間で見られるのだから贅沢なものだ。
いつもは、いや、今までは(ただのんびり走る事)が目的だった。
しかし、トラベラーズノートを使い始めてからと言うもの、(ただのんびり走る事)が(何かを探しながらのんびり走る事)に変わった。
何気ない風景がとても新鮮に見えたり、普通の民家が何か不思議な佇まいに見えたり…
それはこのノートのせいだ。「とにかく何かを書きたくなるノート」なのだ。
どちらかと言うと、メモもしないし、旅の記録も大雑把だったボクが細かくメモをし、旅先で手に入れたものは例え有料道路の通行券の半券であっても大事に取っておくようになった。
トラベラーズノート。実に不思議なノートである。
カスタマイズする楽しさもあるが、「全てを自分で作りあげていく」醍醐味。
人生を記しておくノート、「自分の人生」がそこには詰まっている。
(書くこと)が極端に少なくなった今、忘れていた大切なことを思い出させてくれるノート。
とても温かいノートだ。

まさか面倒臭がりの自分がこんな風に「自分の軌跡」を記すことに夢中になるとは…
その変化に一番驚いているのは、紛れもなくこのボクなのだ。

そんな事を考えながら、展望台らしき場所があったので車を停め、途中のコンビニで買ったサンドイッチと缶コーヒーを出し、景色の良さそうなベンチに座って食べる。
サンドイッチを頬張りながら、自分にもう少し絵心があればこの景色を描けたかもしれない、このサイズの画用紙リフィルを作ってみようかなと思った。
景色の良い場所でノートを傍らに置いて食べるものは、言葉に出来ない「ご馳走」である。

「ただ走るだけ」なら1周しても平日なら6時間もあれば走れる伊豆。今日は半分ちょっとしか走っていない。
それでも充実感でいっぱいだ。

さて、もう少し走って帰ろう。今日はどういう風にノートに書こうかな?